2025年度実践型プログラム「オーストラリア・サミット・プログラム」を実施しました
2026年2月2日~7日にオーストラリア国立大学(ANU)との国際協働学習プログラム「オーストラリア・サミット・プログラム」がキャンベラにて実施されました。本年度はANUから12名、本学から8名の計20名の学生が参加しました。
本プログラムは毎年異なるテーマに対して日豪両国間でコミュニケ(提言書)を取りまとめ、両国が直面する社会課題の解決と理想とする社会の達成を目的としています。
2025年度のテーマは「アジア太平洋地域における気候変動への適応策:グローバル・地域・ローカルのアプローチ(Climate Adaptation in the Asia-Pacific: Global, Regional and Local Approaches)」。参加者たちは、21世紀のアジア太平洋地域において気候変動を緩和し、適応するための一貫性ある戦略的な政策を構築するため、綿密な事前学習とプログラム期間中の様々なレクチャー、ディスカッションを通じ、最終日には両学間でコミュニケを採択しました。
サミット期間中は、両学法学部および上智大学特任教授を合わせた7名の教授陣からレクチャーを受け、多様な視点でテーマについてのインプットを深めると同時に、熱心な質疑応答や学生間でのグループディスカッションを通して両国における社会課題の洗い出しや意見交換を行い、コミュニケ作成に向けての準備を進めました。
コミュニケでは、国際的な批判を受ける両国の適応不足を踏まえ、地域・宗教・先住民文化の保護を目的とした共同委員会の設立を提言している他、中小企業が環境認証や持続可能性において不利な状況にあるとして、両国共通の環境認証制度を創設し、多国籍企業による支援やグリーンファイナンスの活用を促すこととしています。さらに、適応技術への投資停滞を解消するため、50億豪ドル規模の国際グリーン経済協力(IGEC)を設立し、エネルギー、食料安全保障、災害予測技術などの研究開発を推進することを提案。加えて、教育者向け研修や子ども向けメディアキャンペーンを通じ、気候適応に関する知識ギャップと誤情報の問題を解消し、社会全体の行動を促すことを求める等として、サミット最終日の閉会式において全会一致にて、コミュニケを表明しプログラムは幕を閉じました。
本コミュニケに対し、元国際連合紛争調停官および日本政府気候変動交渉首席交渉官で、現在は上智大学特任教授である島田久仁彦先生からは以下の通り、コメント・評価をいただきました。
「今回で3回目の開催となる本サミットは毎回テーマに沿った提言を参加者がPolicy Communiqueという形で作成し、テーマに対しての理解を深めるとともに、学生ならではの視点から実際の政策に反映できる内容を提示しています。
Diversity & Inclusionについてのコミュニケ(2023年度)、移民問題についてのコミュニケ(2024年度)は、日豪外務省および法務省の担当官に共有されただけでなく、米国を含む他国政府機関や政策研究機関にも共有され、高い評価を得ています。
今年度のテーマであった『アジア太平洋地域における気候変動への適応策』についても、専門家によるレクチャーの内容を踏まえて参加者たちがそれぞれの関心とバックグラウンドに沿ってコミュニケを作成しました。専門家や学生間での意見交換を通じ、多くの学びがあったことと思います。今年のコミュニケについては、早速、豪州外務大臣にもインフォーマルな形ですでにシェアされ、高い評価をいただいています。
自分たちが学んでいる内容や議論した内容が、具体的にどのような形で政策や実務に活かされていくのかを、コミュニケを作成し、提言していくことで、学生たちも実感できるのではないかと考えます。」
参加学生たちはコミュニケ採択に向けて、事前に合計10を超える文献や資料を読み込み、個人プレゼンテーションを作成。また、プログラム期間中の島田久仁彦 特任教授によるワークショップでは、気候変動をテーマとして参加者は6つの国/地域と2つの団体を代表するグループに分かれ、全体会議と複数回の個別交渉を行い、最終全体会議で合意形成を試みるデモンストレーションを行う等、実際の国際会議にも通ずる実践的な合意形成のプロセスを学びました。
決して簡単ではない中でも準備を進めた参加者たちからは、「講義で得た知識やグループで生まれたアイデアを、オーストラリアと日本という異なる文化・社会・学術的背景を持つ参加者が協力したことで議論がより豊かになり、国際課題に対して多様で創造的な視点から一つのコミュニケとして形にできたことが、このサミットの最大の成果だった。」との声が聞かれました。
サミット終了後にはオーストリア旧連邦議会や国立博物館を訪問するなど、オーストラリアの学生と共にその歴史と文化についても学びを深めました。本プログラムでは、そうした学術的・実践的な経験はもちろん、それらの経験を通じて行った学生間文化交流という学術的経験にとどまらない重要な体験を得られることも大きな魅力といえるでしょう。