イスパニア語学科 松丸 進 (教皇庁立ハベリアナ大学<コロンビア>)
交換留学 2015年秋学期~2016年春学期
私は、コロンビアの首都ボゴタにある教皇庁立ハベリアナ大学に一年間の交換留学をしました。2016年、コロンビアは今、政府とFARC(コロンビア革命軍)との和平合意交渉、その是非を問う国民投票の実施、そしてサントス大統領のノーベル平和賞受賞と、歴史的にも大きく動いています。帰国した後にそうした出来事が立て続けにあり、その瞬間に立ち会えなかったことは、私としてはちょっと寂しかったりもしますが、今でも現地の友人らと連絡を取り合って、遠い日本にいながら、その熱気を感じています。
さて、コロンビアに留学したと言うと、「どうしてコロンビアを選んだのか」とよく聞かれるのですが、正直なところ返答に困ってしまいます。子どもの頃から南米、特にペルーの遺跡に興味はありましたが、コロンビアについてはよく知りませんでした。当時はペルーへの交換留学が始まる前だったので、別の留学先を考えていたところ、上智からコロンビアへの交換留学生は初めてと聞いて、「一番乗りってなんか気分が良いな」と思って決めたのが本音のところです。ただ今となっては、何かに導かれるかのように、コロンビアに行くべきして行ったのかもしれません。
留学というのは、すでに確固としたやりたいことが決まっている志を持った人がするものだと思っていましたが(もちろんそういう方もいて然るべきですが)、私のように、巡り合わせとタイミングに任せて、軽いフットワークで留学に行く人がいても良いのでは、とも思います。現地に行ってから動機が芽生えて、自分の興味や目的が見つかることも多々あるはずです。そもそも現地に行けば、予想や期待していたようにならなかったりの連続ですし、当初の考え方から180度変わってしまったりもします。むしろそれで良いと思います。その時々において臨機応変に、時には流れに逆らわずに身を任せて対応することが、異なる文化圏で生活をする醍醐味で、一番楽しいポイントです。
大学生活についてですが、私は先住民について興味があったので、人類学部に所属して、現地の学生と一緒に、コロンビアの民族学や国内避難民問題、開発人類学について学びました。また外国人向けに開講されているスペイン語コースも受講しました。ハベリアナ大学はボゴタの中心部に位置し、大通りに面していて交通の便も良く、治安も良い地区にあります。最近、建物も新しくつくられたりして、構内もきれいです。カフェや食堂も多く、緑も多いのでのんびりできます。定期的に講演会、コンサート、映画上映会やボゴタ市内・近郊ツアーなど、学生であれば誰でも参加できるイベントが各種開催されています。そうしたイベントに参加することで、他学部の学生や学外の人とも交流を深め、つながりを増やしていくことができました。
人類学部では、日本国内ではなかなかできない、コロンビアの民族学・文化人類学に直に触れることができました。コロンビア人であれ、私のような外国人であれ、人類学部として同じ興味を持つもの同士だったので、話も早く通じ合えたように思います。おまけに、遠い日本からわざわざコロンビアの人類学を学びに来た私が奇特に思えたようで、もともとの彼ら・彼女らの世話好きな性格も相まって、本当にいろいろと助けてもらいました。興味があること、どういうことをやりたい・見たいなど、友人らに対して普段から私は(拙くとも)言葉にしていたので、「それなら何処々々に行きなよ」「誰々を紹介してあげるよ」と申し出てくれました。黙っていても相手には伝わらないので、自分の好きなことは臆せず言葉にして、とりあえず表現してみることが大切で、そうすることによってつながりがだんだんと広がっていくことを実感しました。
そうした学内での経験ももちろん大切なものでしたが、先に述べたように、だんだんとつながりを辿っていく中で、各地域の先住民の友人ができたことも自分にとっての大きな収穫でした。地域で行っている儀礼や集会に参加させてもらうこともでき、その中で寝食を共にして、文化や考え方など日々の対話の中で直接教えてもらいました。本や文献を読んで知ることも必要ですが、それだけでは不十分で、そうした文章には表れてこない行間の部分の、現地で日々を生活する人々がどのように考えているのか、その一端ではあるけれども、直接触れることができました。それまで「頭の中の知識」であった事柄が、まさに「血となり肉となり」統合されたような感覚です。思い返してみても、非常に有意義な日々を過ごせたと思います。もちろん帰国した今でも、彼ら・彼女らとのやりとりは続いています。今後も、何かしらの形でコロンビアとつながりを保ち続けますし、巡り合わせとタイミングさえあえば、再びコロンビアで学びたいと考えています。